一日お父さん
2001年6月4日休日の夕方、父と子がキャッチボールをする。
これって、子供にとっては週1回きりのお父さんと遊べる
楽しい時間だし、お父さんにとっても、
子供とコミュニケーションをする大切な機会だったりします。
夕方の井の頭公園で、フライングディスクをしました。
エアロビーという、とてもよく飛ぶフリスビー。
本当に少しの力でよく飛ぶんです。300mも飛んだという
世界記録があるのも肯けます。
彼女と二人で楽しみました。
疲れたのでブレイクしていると、一人の男の子が
隣でボール遊びを始めました。
ボールを上に投げて捕る。それをひたすら繰り返す。
広い井の頭公園なのに、隣でされると、
「遊んで」オーラにしか見えません。
キャッチボールを始めました。
彼は小学2年生くらい。僕は、まるで彼のお父さんのような
気がしてきました。
「なんか学校で嫌なことでもあったのか?」
なんて聞いてみたりして(答えてくれなかったけれど)。
彼女も交えてフリスビーもしました。
彼が、力みすぎて屋根の上に乗せてしまったり
(僕が登ってとりました。他人の家の屋根に登るなんて
何年ぶりだろう!)。
帰り際に、
「また来週も来てくれる?」
と彼に聞かれたとき、答えに詰まりました。
子供のころ、公園で知らない子と遊んだときは
「また遊ぼう!」
って気軽に言えたのに。
もう会えないだろうなぁ、って思うのは、
僕が大人になってしまったからかもしれません。
ちょっぴり切ない、夕暮れの井の頭公園でした。
またね、かづき!
またね、ももちゃん(かづきの犬。メス、3歳)!
これって、子供にとっては週1回きりのお父さんと遊べる
楽しい時間だし、お父さんにとっても、
子供とコミュニケーションをする大切な機会だったりします。
夕方の井の頭公園で、フライングディスクをしました。
エアロビーという、とてもよく飛ぶフリスビー。
本当に少しの力でよく飛ぶんです。300mも飛んだという
世界記録があるのも肯けます。
彼女と二人で楽しみました。
疲れたのでブレイクしていると、一人の男の子が
隣でボール遊びを始めました。
ボールを上に投げて捕る。それをひたすら繰り返す。
広い井の頭公園なのに、隣でされると、
「遊んで」オーラにしか見えません。
キャッチボールを始めました。
彼は小学2年生くらい。僕は、まるで彼のお父さんのような
気がしてきました。
「なんか学校で嫌なことでもあったのか?」
なんて聞いてみたりして(答えてくれなかったけれど)。
彼女も交えてフリスビーもしました。
彼が、力みすぎて屋根の上に乗せてしまったり
(僕が登ってとりました。他人の家の屋根に登るなんて
何年ぶりだろう!)。
帰り際に、
「また来週も来てくれる?」
と彼に聞かれたとき、答えに詰まりました。
子供のころ、公園で知らない子と遊んだときは
「また遊ぼう!」
って気軽に言えたのに。
もう会えないだろうなぁ、って思うのは、
僕が大人になってしまったからかもしれません。
ちょっぴり切ない、夕暮れの井の頭公園でした。
またね、かづき!
またね、ももちゃん(かづきの犬。メス、3歳)!
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地中海沿岸のカフェ
2001年6月3日僕は海から遠く離れた町で生まれたせいか、
海に憧れを抱いています。
テレビで見る海の青さや、ビーチボーイズの中にある波の音、
もしくは、海を舞台に繰り広げられる青春小説。
海的なるものに、ホント焦がれてました。
だから、海の近くにあって、夏の日差しが気持ちよくて、
涼しげな風が流れるカフェで、コーヒーを飲んで、本を読む。
そんな、ゆっくり流れる一日をすごすことができたら
幸せだろうなぁ、なんて村上春樹の本を読むたびに
思っていたものです。
それが今日、現実になりました。
日差しが気持ちよくて、さわやかな風が流れ、
おいしいコーヒーが飲めるカフェに行きました
(しかも、素敵な女の子と一緒に!)。
とは言っても、波の音は聞こえません。
だって、ここは六本木だからです。
YAFFA Cafeのテラスは、最高です。白く塗られた壁に
様々な植物が飾られ、1/fの風が(扇風機によってですが、
それも許せるくらい気持ちいいんです)
そよそよと流れています。
ここは、六本木にある地中海沿岸であり、
ビルの谷間にある海辺です。
「火事です。落ち着いて非難してください」
なんてアナウンスもあったりしたけどね(誤報)。
海に憧れを抱いています。
テレビで見る海の青さや、ビーチボーイズの中にある波の音、
もしくは、海を舞台に繰り広げられる青春小説。
海的なるものに、ホント焦がれてました。
だから、海の近くにあって、夏の日差しが気持ちよくて、
涼しげな風が流れるカフェで、コーヒーを飲んで、本を読む。
そんな、ゆっくり流れる一日をすごすことができたら
幸せだろうなぁ、なんて村上春樹の本を読むたびに
思っていたものです。
それが今日、現実になりました。
日差しが気持ちよくて、さわやかな風が流れ、
おいしいコーヒーが飲めるカフェに行きました
(しかも、素敵な女の子と一緒に!)。
とは言っても、波の音は聞こえません。
だって、ここは六本木だからです。
YAFFA Cafeのテラスは、最高です。白く塗られた壁に
様々な植物が飾られ、1/fの風が(扇風機によってですが、
それも許せるくらい気持ちいいんです)
そよそよと流れています。
ここは、六本木にある地中海沿岸であり、
ビルの谷間にある海辺です。
「火事です。落ち着いて非難してください」
なんてアナウンスもあったりしたけどね(誤報)。
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深夜の飛行機
2001年6月2日深夜の飛行機っていいですよね。
窓から見える夜景は綺麗だし、夜景が見えないほどの
上空を飛んでいる場合には、まるで無の空間を移動しているような
気がします。
今日は、福岡から羽田までANAで移動しました。
福岡→羽田といえば、スカイマークがありますが、
特割だとほとんど同じ料金なんですよね。
普段なら、構造破壊のアティテュードに対するリスペクトを込めて
スカイマークを選ぶんですけど、やっぱり同じ料金じゃあね。
だって、スカイマークは羽田に着いてからのバスがつらいですから。
そんな理由で今回はANAを選んでしまいました。
でも、応援してるぞ。がんばれ、スカイマーク。
PUNKなSKYにリスペクトを!
窓から見える夜景は綺麗だし、夜景が見えないほどの
上空を飛んでいる場合には、まるで無の空間を移動しているような
気がします。
今日は、福岡から羽田までANAで移動しました。
福岡→羽田といえば、スカイマークがありますが、
特割だとほとんど同じ料金なんですよね。
普段なら、構造破壊のアティテュードに対するリスペクトを込めて
スカイマークを選ぶんですけど、やっぱり同じ料金じゃあね。
だって、スカイマークは羽田に着いてからのバスがつらいですから。
そんな理由で今回はANAを選んでしまいました。
でも、応援してるぞ。がんばれ、スカイマーク。
PUNKなSKYにリスペクトを!
独りで歳を取る
2001年3月18日1年ぶりに会った友達は、とても若々しかった。
彼はまだ学生だからだろうな。
友達がいるからだろうな。
いつも独りでいると、すごいスピードで歳を取る。
去年の写真は別人。
彼らより、歳を取ってしまった。
精神、顔。
いつも考えてばかりいて良いのだろうか?
彼はまだ学生だからだろうな。
友達がいるからだろうな。
いつも独りでいると、すごいスピードで歳を取る。
去年の写真は別人。
彼らより、歳を取ってしまった。
精神、顔。
いつも考えてばかりいて良いのだろうか?
追い詰めろ!
2001年3月15日 明日朝早いから、今日は早く寝なきゃ。
と思っているのに、うだうだインターネット。
絶対明日後悔するのに。
夜中に食べるのは良くない。
分かっているけど深夜のラーメン、やめられん。
自分をどんどん追い詰めるのが好きなのかな。
思うように、正直に生きるのが一番楽で
そして楽しいと思うんだけどね。
と思っているのに、うだうだインターネット。
絶対明日後悔するのに。
夜中に食べるのは良くない。
分かっているけど深夜のラーメン、やめられん。
自分をどんどん追い詰めるのが好きなのかな。
思うように、正直に生きるのが一番楽で
そして楽しいと思うんだけどね。
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走り出すこと
2001年3月8日走り出すのは簡単なことだと
誰もが言う
最初の一歩さえうまくいけば
最初の一歩をうまくいかせるのはとても難しいけれど
すぐに歩みを止めるのはとても簡単なことだ
結局僕は怠け者で
走り出すことすら出来ない
走り出さずに
走ることが出来たら良いのに
最初の一歩を踏みきらずとも
走ることが出来たら良いのに
歩みを止めるのは簡単だ
誰に言われなくてもできる
でも、あの娘を落とすのは難しい
走ることのほうがどれだけ苦しいだろうか
でも、あの娘を落とすことのほうが難しい
そして、落としにかかるのは、
走り出すことよりももっと難しい
誰もが言う
最初の一歩さえうまくいけば
最初の一歩をうまくいかせるのはとても難しいけれど
すぐに歩みを止めるのはとても簡単なことだ
結局僕は怠け者で
走り出すことすら出来ない
走り出さずに
走ることが出来たら良いのに
最初の一歩を踏みきらずとも
走ることが出来たら良いのに
歩みを止めるのは簡単だ
誰に言われなくてもできる
でも、あの娘を落とすのは難しい
走ることのほうがどれだけ苦しいだろうか
でも、あの娘を落とすことのほうが難しい
そして、落としにかかるのは、
走り出すことよりももっと難しい
これから割れるグラスに
2001年3月7日君にはカティーサークが注がれている
そして、僕の身体を温めようとしている
君は誰の掌の中を渡ってきたのだろう
エリザベスが笑いながら飲むその掌の中か
クリントンが葉巻を燻らせて笑ったその掌の中か
しかし今、君は僕の掌の中にいる
君は初めから割れるために生まれてきたのか
若しくは割れることが生き甲斐なのか
いずれにせよそれは君の生きかたである
いずれにせよ君にはカティーサークが注がれている
そして僕を温める
そして、僕の身体を温めようとしている
君は誰の掌の中を渡ってきたのだろう
エリザベスが笑いながら飲むその掌の中か
クリントンが葉巻を燻らせて笑ったその掌の中か
しかし今、君は僕の掌の中にいる
君は初めから割れるために生まれてきたのか
若しくは割れることが生き甲斐なのか
いずれにせよそれは君の生きかたである
いずれにせよ君にはカティーサークが注がれている
そして僕を温める
工事?しなくて良いって。
2001年2月10日今日、会社に10分遅刻してしまいました。
いやー、ほんと情けないッす。
何があろうとも遅れる自分が悪いんです。分かってます。
でも、少し言い訳させて下さい。
今、僕の住んでいるおんぼろマンションは外壁工事をしています。
築20年もたって壁がひどく汚れ、痛んできたので
新しく塗りなおすためです。
で、塗る作業をするための足場が建物の周りに組まれています。
ベランダの外にも足場があるわけで。
部屋の外に目をやると、人が空中を歩いていて
めっちゃびっくりしたこともあります。
一昨日、ある通知がポストに入っていました。
「明日ベランダ内部の壁を塗る作業を行ないます。
だからベランダにはなんにも置くなよ」
という趣旨のことが書いてあって。
僕はベランダにあった物干し竿や植物なんかを
部屋に入れました。
部屋が汚れるから嫌なんですけど、工事だから
仕方なく。
でもちょっと部屋に入りきらなかった箱を
ベランダに残しておきました。
きちんと積んで寄せておけば作業の邪魔に
ならないだろうと思って。
それで昨日、仕事から帰ってベランダを見ると。
箱は全てひっくり返されていた!
しかも窓の前にあるから、窓が開かないし。
確かに全て片付けなかった僕が悪いんですけど。
いくらなんでも、めちゃくちゃにしなくても良いじゃん。
仕事から帰って疲れていたけど、4時までかかって
片付けて。それから寝ました。
で、(やっと遅刻の理由です)朝7時ごろ。
ベランダで話し声がするんです。
寝ぼけてて良く分からなかったけど、うるさい。
足音も話し声も笑い声も。
おかげで最悪の目覚めを迎えてしまいました
(いや、目覚められなかったんです)。
で、片付けた箱は、またひっくり返されていました。
今日一日、ずっと悔しい、嫌な気分でした。
何が嫌って、遅刻したことではなくて、荒らされたこと。
ほんと、踏み躙られるのって嫌ですよね。
住みやすくするための工事なのに、嫌な気分にさせるんなら
ほんと、工事なんてしなくて良いって。
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ドライブする時、どんな音楽聴きますか?
2001年2月4日 今、久しぶりに靴磨いてます。
3ヶ月ぶり。かなり汚れも溜まってるはず。
落しがいがあるってモンです。
で、BGMは桑田佳祐「孤独の太陽」。渋い気分で磨いてます。
僕、このCD大好きなんです。
実は、ドライブする時必ず聴くCDでもあります。
彼女を家に送り届けた後、独りで家路につくと必ず
孤独の太陽を聴きます。で、熱唱するんです。
きっと独りの寂しい気分にハマルから
聴いてしまうんでしょうね。
ドライブする時、あう音楽ってありますよね。
普段は聴かないけれど、皆でどこか出かける時には
モー娘。は欠かせないし。
(ジャンケンピョーンはどうかと思うけれど)
どんな音楽をかけるか考えるのも、ドライブの楽しみですよね。
皆さんは、ドライブする時、どんな音楽聴くんでしょうか?
ただし、車から音が思いっきり漏れてるのは、頂けません。
なんで、かっこいい車に限って浜崎あゆみを
大音量でかけてるんですかね?
それがかっこいいのかな?
先日、黒塗りのベンツから、
「♪ジャンジャンバリバリ、パチンコマーン」
(by ランキンタクシー)
と大音量で聞こえてきた。
ベンツからパチンコマンはないでしょ、普通。
乗ってる人はきっと、小林ベンツ(パチプロ)だな。
3ヶ月ぶり。かなり汚れも溜まってるはず。
落しがいがあるってモンです。
で、BGMは桑田佳祐「孤独の太陽」。渋い気分で磨いてます。
僕、このCD大好きなんです。
実は、ドライブする時必ず聴くCDでもあります。
彼女を家に送り届けた後、独りで家路につくと必ず
孤独の太陽を聴きます。で、熱唱するんです。
きっと独りの寂しい気分にハマルから
聴いてしまうんでしょうね。
ドライブする時、あう音楽ってありますよね。
普段は聴かないけれど、皆でどこか出かける時には
モー娘。は欠かせないし。
(ジャンケンピョーンはどうかと思うけれど)
どんな音楽をかけるか考えるのも、ドライブの楽しみですよね。
皆さんは、ドライブする時、どんな音楽聴くんでしょうか?
ただし、車から音が思いっきり漏れてるのは、頂けません。
なんで、かっこいい車に限って浜崎あゆみを
大音量でかけてるんですかね?
それがかっこいいのかな?
先日、黒塗りのベンツから、
「♪ジャンジャンバリバリ、パチンコマーン」
(by ランキンタクシー)
と大音量で聞こえてきた。
ベンツからパチンコマンはないでしょ、普通。
乗ってる人はきっと、小林ベンツ(パチプロ)だな。
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就職活動
2001年1月31日弟から電話がありました。
「TBSの1次、通ったよ!!」
すごく嬉しそうな声で。
2年前、自分も就職活動してたんだよなぁ。
結構一生懸命しましたよ。
で、結局、今の会社だけ受かったからここに決めて。
今こうして働いてるわけです。
確実に、あのときのほうがやる気あったね。
今の仕事のダレっぷりと言ったら。
就職活動しないで2年位したいことしてみるのも
いいなぁって、いまさらながら思ってます。
いまさら?そんなことない!! ……よ、ねぇ?
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年賀状(いまさらだけど!)
2001年1月30日もう一月も終わりだというのに、まだ返事を書いてない
年賀状があります。
社会人になって初のお正月、年賀状を出すべきかどうか
すごく悩みました。
友達に書くのは良いけど、大して仲良くない人、
つまり会社の人に、義理で出さねばならない年賀状なんて、
いらない!!
媚売るなんて、嫌だ!!
そりゃあ、出した方が良いってのは分かってるんです。
貰って嬉しくないはずないし、関係が悪化することもないもんね。
でも、出さねばならない年賀状というカルチャーに対して
反発心があったんです。
で、結局書かなかったんですよ、一通も。
それでも、元旦、何通か来てみると、やっぱ嬉しい!!
その時思いましたね、「ああ、書くべきだったなぁ」って。
だって、年賀状書くだけで受け取る人が
少しでも幸せな気持ちになれるんだし。
そして、友達に年賀状を書けることの幸せったら!!
来年は絶対書こうと決意しました。
あ、それより、今年の返事書かなきゃ。
友達がくれたんだし。
もう年賀状売ってないよな……
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新年・新世紀
2001年1月11日とうとう明けましたね、2001年。そして、21世紀。
せっかくの世紀の変わり目なので、何か新しい事を始めなきゃと決意。
で、この日記を再開することにしました(小さな決意!)。
今まで書いてた長ったらしい(誰も読まねぇっつーの!)のは違った、
簡潔なやつを書こうかな、と。
新年、新世紀だなんて浮かれているけれど、
年や世紀が変わっただけなら
全然意味ないですから。
要は、自分がどう変わるか、ですもんね。
せっかくの世紀の変わり目なので、何か新しい事を始めなきゃと決意。
で、この日記を再開することにしました(小さな決意!)。
今まで書いてた長ったらしい(誰も読まねぇっつーの!)のは違った、
簡潔なやつを書こうかな、と。
新年、新世紀だなんて浮かれているけれど、
年や世紀が変わっただけなら
全然意味ないですから。
要は、自分がどう変わるか、ですもんね。
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古いノート、古い詩
2000年10月25日住民票を相変わらず探していた。
どうしても見つからない。どうしても見つけたい。
それでも見つからないので、今まで探していない所を
探すことにした。
長いこと手をつけていない本棚を探すことにした。
本棚といっても、ただのダンボールである。
引っ越してきた際、荷解きが面倒だったし、本棚がなかったので、
とりあえずダンボールを本棚代わりに使った。
それが今まで、そのままなのだ。
結局いつも、そんなものだ。
「とりあえず」は、決して「とりあえず」ではなく、
「ずっと」になってしまう。
つまり、何事もはじめで全て決まってしまうということだろう。
僕の場合、ダンボールは、「とりあえず」、本棚になってしまう。
そして、「ずっと」、本棚のままだ。次の引越しの時まで。
絶対にここにはないであろう、という場所も探した。
例えば、英英辞典のページのあいだ。
買ってから一度開かれただけの分厚いロングマン英英辞典の
あいだに挟まっているはずなどなかった。
まして、カバーまで付いているというのに。
重い英英辞典を、カバーを外して振ってみたが
やはり見つからなかった。
僕は、次第に疲れてきた。
ずっと探していると、集中力は薄れていく。
探しているつもりが、本を読んでしまっていたりして、脱線する。
それでも探しつづけていると、ダンボールの中に、
古いノートを見つけた。
何気無く開いてページをめくった。
最初の4ページだけ、英語のセンテンスが書きこんであった。
それからは、ずっと白紙だった。
英語の勉強を始めたはいいが、すぐに飽きてしまったのだろう。
意欲は、4ページ分しかなかったのだ。
何も書いてないので閉じようとすると、
最後のほうに、鉛筆のあとを見つけた。そこには、誌が書かれていた。
……
僕は、歩く。休みもせず歩く。
立ち止まると、もう動くことは出来ない。
だから歩く。
歩きつづけて、家に着く。
歩くのを止めて、眠くなる。
僕は、眠って良いのだ。
もう、疲れたよ。
ずっとこのまま眠ることができたら良いのに。
もうこのまま目が覚めなければ良いのに。
……
下手な詩だ。笑いそうなくらい。
でも僕は、笑えなかった。
今の僕の状況を、そのまま表していたから。
僕は、住民票を探すことが急に馬鹿らしくなってきた。
そして、住民票を探している僕が馬鹿らしく思えた。
全てをほったらかして、ベッドに寝転がった。
今は、眠ることしか出来ないような気がした。
大事なもの、古い写真
2000年10月13日 僕は、昨日取りに行った住民票の写しを、
どうやら失くしてしまったらしい。
嫌な気持ちを我慢しつつ、時間を無駄にしながらも
やっと手に入れたものなのに。
きっと、昨日の僕は、失くさないようにと思って、
どこかに大事にしまったのだろう。
どうして、大事なものほど、失くしてしまうのだろう。
そして、大事なものは、欲しいと思う限りは、
二度と見つからない。
その存在が忘れられた頃に、再び姿をあらわす。
今度は別の意味で、僕を悩ませる。
一生懸命になって、住民票の写しを探していると
古い封筒を見つけた。
これかな、と思って開けてみると、違った。
そこには、学生時代の写真が入っていた。
友達とキャンプに行った時の写真だった。
彼が焼き増しをして、僕にくれたものだ。
封筒には、彼からのメッセージが同封されていた。
「なんでお前ばっか写ってんだよ。いらねーよ。だからやるよ」
キャンプのすぐ後にこれらの写真を見た時は、
単に、「楽しかった」だとか、「馬鹿だな、俺」という
感想しか待たなかった。
しかし、久しぶりに写真を見た今は、懐かしさがこみ上げてきた。
懐かしさといっても、友人達に対してではない。
確かに、今は友達もいない土地で暮らしているから
彼らのことを懐かしみもした。
僕が懐かしんだのは、僕自身である。
俺って、明るかったなぁ、と。
俺って、楽しかったなぁ、と。
俺って、馬鹿だったなぁ、と。
俺って、馬鹿で良かったなぁ、と。
本当に馬鹿で良かったなぁ、と。
僕は、それらの写真を残して、封筒と友人が
メッセージを書いた紙を捨てた。
僕は、写真を見ながら、過去がだんだんと
遠くなっていくことを感じていた。
どうやら失くしてしまったらしい。
嫌な気持ちを我慢しつつ、時間を無駄にしながらも
やっと手に入れたものなのに。
きっと、昨日の僕は、失くさないようにと思って、
どこかに大事にしまったのだろう。
どうして、大事なものほど、失くしてしまうのだろう。
そして、大事なものは、欲しいと思う限りは、
二度と見つからない。
その存在が忘れられた頃に、再び姿をあらわす。
今度は別の意味で、僕を悩ませる。
一生懸命になって、住民票の写しを探していると
古い封筒を見つけた。
これかな、と思って開けてみると、違った。
そこには、学生時代の写真が入っていた。
友達とキャンプに行った時の写真だった。
彼が焼き増しをして、僕にくれたものだ。
封筒には、彼からのメッセージが同封されていた。
「なんでお前ばっか写ってんだよ。いらねーよ。だからやるよ」
キャンプのすぐ後にこれらの写真を見た時は、
単に、「楽しかった」だとか、「馬鹿だな、俺」という
感想しか待たなかった。
しかし、久しぶりに写真を見た今は、懐かしさがこみ上げてきた。
懐かしさといっても、友人達に対してではない。
確かに、今は友達もいない土地で暮らしているから
彼らのことを懐かしみもした。
僕が懐かしんだのは、僕自身である。
俺って、明るかったなぁ、と。
俺って、楽しかったなぁ、と。
俺って、馬鹿だったなぁ、と。
俺って、馬鹿で良かったなぁ、と。
本当に馬鹿で良かったなぁ、と。
僕は、それらの写真を残して、封筒と友人が
メッセージを書いた紙を捨てた。
僕は、写真を見ながら、過去がだんだんと
遠くなっていくことを感じていた。
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長い夢、ポケモン
2000年10月12日 長い夢を見ていた。
・・・・・・
久しぶりの休日。何もすることがない僕は、免許証の
住所変更をしようと思い立った。
しかし、せっかくの休みに、あの嫌な区役所に行くのは気が引けた。
なぜなら、彼らの態度はとてもひどいからだ。
区民を馬鹿にした物腰、言い方。今時あんな言い方をするのは、
区役所の人間と、大学の事務室の職員くらいのものだ。
それでも、区役所に行かないことにはどうしようもないので
(このことが彼らの特権意識を作り上げているのだが、
本当にどうしようもない)
渋々向かうことにした。
・・・・・・
嫌な気持ちになりながらも、住民票の写しを手に入れた
(お金を払って!)。
次は、警察署に向かった。
が、すでに時計は5時を回っていた。
終わっている。
免許証の住所変更は、もう受け付けていないだろう。
それにしても、閉まるのが早すぎる。
いまどき、5時に閉まる店がどこに存在するというのだ。
田舎のコンビニだって、11時までは開いている。
1日の予定が済んでしまった。やることが無くなった。
仕方なく、ビールを買って、港で飲んだ。
港は、もうすっかり秋になっていて、ビールを飲むには寒すぎた。
すぐ頭の上を飛行機が飛んでいった。
機体には、ポケモンが描かれていた。
頭の上をポケモンが飛んでいくのを見るのは、不思議な気分だった。
こうなると、ガンダムや、たけちゃんマンが
飛んでいてもおかしくない。
ビールを飲み終わると、眠くなった。
「昼間からビールを飲むのは、どうだろう」
僕は、ふとそんな言葉を口にしてみた。
なぜそんな言葉が口をついて出てきたのかは分からなかった。
僕は、どうでも良くなって、そのまま眠ってしまった。
・・・・・・
長い夢から目が覚めると、辺りは真っ暗だった。
時計は夜の9時を指していた。
食料品を買いに行きたかったが、すでにダイエーは閉まっていた。
僕は諦めて、家に帰って寝ることにした。
・・・・・・
久しぶりの休日。何もすることがない僕は、免許証の
住所変更をしようと思い立った。
しかし、せっかくの休みに、あの嫌な区役所に行くのは気が引けた。
なぜなら、彼らの態度はとてもひどいからだ。
区民を馬鹿にした物腰、言い方。今時あんな言い方をするのは、
区役所の人間と、大学の事務室の職員くらいのものだ。
それでも、区役所に行かないことにはどうしようもないので
(このことが彼らの特権意識を作り上げているのだが、
本当にどうしようもない)
渋々向かうことにした。
・・・・・・
嫌な気持ちになりながらも、住民票の写しを手に入れた
(お金を払って!)。
次は、警察署に向かった。
が、すでに時計は5時を回っていた。
終わっている。
免許証の住所変更は、もう受け付けていないだろう。
それにしても、閉まるのが早すぎる。
いまどき、5時に閉まる店がどこに存在するというのだ。
田舎のコンビニだって、11時までは開いている。
1日の予定が済んでしまった。やることが無くなった。
仕方なく、ビールを買って、港で飲んだ。
港は、もうすっかり秋になっていて、ビールを飲むには寒すぎた。
すぐ頭の上を飛行機が飛んでいった。
機体には、ポケモンが描かれていた。
頭の上をポケモンが飛んでいくのを見るのは、不思議な気分だった。
こうなると、ガンダムや、たけちゃんマンが
飛んでいてもおかしくない。
ビールを飲み終わると、眠くなった。
「昼間からビールを飲むのは、どうだろう」
僕は、ふとそんな言葉を口にしてみた。
なぜそんな言葉が口をついて出てきたのかは分からなかった。
僕は、どうでも良くなって、そのまま眠ってしまった。
・・・・・・
長い夢から目が覚めると、辺りは真っ暗だった。
時計は夜の9時を指していた。
食料品を買いに行きたかったが、すでにダイエーは閉まっていた。
僕は諦めて、家に帰って寝ることにした。
ダイエー、応援歌、ビール
2000年10月1日 食料品を買うために、近くのダイエーに入った。
店に入ると、大音量で、音楽がかかっている。
プロ野球チームのホークスの応援歌だ。
そこらじゅうに優勝セールの予告ポスターが張られている。
何人かの客が、ポスターを見て話していた。
それにしても音楽がうるさい。
どうしてこんなに大音量でかける必要があるのだろう。
ダイエーは、応援歌を聴かせることで客を洗脳しようと
してるのだろうか。
よくわからなかったが、僕にとってはどうでも良いこと
だったので、無視して食料品売り場に向かった。
食料品のフロアは、地下にある。
地下に行くためには階段を降りるか、エスカレーターに
乗らなければならない。僕は、階段を降りた。
階段の踊り場にはベンチがある。
いつも、おばさんが休んでいたり、高校生が座って談笑している。
いつもなら、何も考えずにすんなり通りすぎるのだが、
今回はいつもと少し違った。
50歳くらいの小汚い格好をした男が、ビール片手に、
大きな声を出していたのだ。
男の目の前を通り過ぎる時、目が合った。
僕はなんでもなく通りすぎたが、男は背中で何かを叫んでいた。
こんな昼間から、飲んだくれているなんて。
しかも、ダイエーの地下階段の踊り場で。
僕は、あんな男にはなりたくないと思った。
昼間から飲むのが悪いといっているのではない。
僕だって時には昼にビールを飲む。
ただ、ものには時と場合があり、しかるべき場所と態度と
いうものがあるのだ。
僕は、地下階段の踊り場でビールを飲む男にはなりたくない
と思った。しかも、ダイエーの地下階段の踊り場では。
僕は、シリアルとペリエとモルツビールの500ml缶を
買って帰った。
帰り際にも、大音量の応援歌を聴かねばならなかった。
店に入ると、大音量で、音楽がかかっている。
プロ野球チームのホークスの応援歌だ。
そこらじゅうに優勝セールの予告ポスターが張られている。
何人かの客が、ポスターを見て話していた。
それにしても音楽がうるさい。
どうしてこんなに大音量でかける必要があるのだろう。
ダイエーは、応援歌を聴かせることで客を洗脳しようと
してるのだろうか。
よくわからなかったが、僕にとってはどうでも良いこと
だったので、無視して食料品売り場に向かった。
食料品のフロアは、地下にある。
地下に行くためには階段を降りるか、エスカレーターに
乗らなければならない。僕は、階段を降りた。
階段の踊り場にはベンチがある。
いつも、おばさんが休んでいたり、高校生が座って談笑している。
いつもなら、何も考えずにすんなり通りすぎるのだが、
今回はいつもと少し違った。
50歳くらいの小汚い格好をした男が、ビール片手に、
大きな声を出していたのだ。
男の目の前を通り過ぎる時、目が合った。
僕はなんでもなく通りすぎたが、男は背中で何かを叫んでいた。
こんな昼間から、飲んだくれているなんて。
しかも、ダイエーの地下階段の踊り場で。
僕は、あんな男にはなりたくないと思った。
昼間から飲むのが悪いといっているのではない。
僕だって時には昼にビールを飲む。
ただ、ものには時と場合があり、しかるべき場所と態度と
いうものがあるのだ。
僕は、地下階段の踊り場でビールを飲む男にはなりたくない
と思った。しかも、ダイエーの地下階段の踊り場では。
僕は、シリアルとペリエとモルツビールの500ml缶を
買って帰った。
帰り際にも、大音量の応援歌を聴かねばならなかった。
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エスプレッソ・コーヒー、背筋、折り畳み傘
2000年9月30日 朝目が覚めると、もう2時だった。
ということは、僕が目覚めたのは朝ではない。昼、目覚めたのだ。
つまり、僕は朝という時間を寝て過ごしたわけだ。
なんということだ。せっかくの休日なのに。
大した予定はないにしても、休日は有効に使いたいと思う。
寝て過ごしたことで、今日の半分を浪費してしまったわけだ。
カーテンを開けると、外は雨が降っていた。ますます気が沈んだ。
僕自身も、状況も、僕の休日を無駄にしようとしている。
しかし、本当のところはどうでも良かった。
いずれにしろ、僕の休日には予定と呼べるものは何もないのだ。
とりあえず、起きて顔を洗った。髭が少し伸びていたが剃らなかった。
腹が減っていたので、エスプレッソコーヒーを淹れて、食パンに
たっぷりとバターをのせてトーストし、ベーコンを炒めた上に
卵を2つ落として目玉焼きを作った。
飲むヨーグルトをコップに注いで、トーストの上に
蜂蜜をかけると、遅い朝食が出来あがった。
僕は、朝刊を読みながらがつがつと食べた。
400Mリレーの日本人選手達が、決勝に進出していた。
彼らは4人とも胸を張って写っていた。
エスプレッソコーヒーをすすりながら記事を読んでいる僕は、
背筋がものすごく曲がっていた。
なんだか急に自分が情けなくなってきたが、
どうしようも出来なかった。
彼らは走ったことで胸を張っていて、
僕は家で朝刊を読みながら背筋を曲げているのだ。
ただそれだけのことだ。僕は彼らに干渉しないし、
彼らも僕に干渉する権利はない。
そもそも、彼らは僕に干渉しないだろう。
彼らは走ることで頭がいっぱいなのだ。
とてもじゃないが、休日の昼過ぎに起きて、
エスプレッソコーヒーを飲みながら朝刊を読んでいる
他人のことを考えているはずがない。
僕だって、他人の遅い休日になんか思いを巡らせることはしない。
朝食をとり終わると、ボサ・ノヴァのレコードをかけた。
元気が出てきた。ボサ・ノヴァはいつだって僕を元気付けてくれる。
遅く起きたことや、雨が降っていることを
すべて忘れさせてくる音楽だ。
ましてや、背筋が曲がっていることなんてもう覚えてもいない。
外に目をやると、雨がやんでいた。
僕は、何か新しいレコードが欲しくなったので、
レコード屋に行くことにした。
雨は止んだものの、雲行きが怪しかったので、
念のために折り畳み傘をリュックに入れて家を出た。
歩き始めて5分も経たないうちに雨が降ってきた。
リュックから折り畳み傘を出して差した。一箇所、糸がほつれて
傘の骨から布が外れている部分があった。
そこが気になったので、目をやりながら僕は歩いた。
雨足はだんだん激しくなってきた。
僕の折り畳み傘は小さいので、だいぶ濡れてしまった。
僕はずっと、ほつれた部分を見ながら歩いていた。
その部分からも雨が吹きこんできた。周りを見回すと、
みんな大きな傘を差している。
特に、スーツを着た男性の傘はとりわけ大きい。
それ以外の人は、ビニール傘が多かった。
僕だってサラリーマンなのに、僕は大きい傘を持っていない。
そう考えると、寂しくなってきた。僕は、休日もまともに過ごせない。
その上、大きい傘すら持っていない。楽しそうに話しながら
歩いて行く人達を見ると、ますます寂しさはつのった。
僕には、休日に話しする人もいない。
そして、話し相手が入れるほどの大きい傘すら持っていない。
僕にできることはなんだろう。
この雨の中、ほつれている折り畳み傘を差す
僕にできることはなんだろう。
ふと、朝刊に載っていたリレーの選手達を思い浮かべた。
そうだ、僕は休日を有効に使うことも
出来ないし、大きな傘も持っていない。
ましてや、早く走ることなんてできる筈もない。
けれども、背筋をまっすぐに伸ばして歩くくらいのことはできる。
背筋を伸ばして歩こう。
それから僕は、背筋を伸ばして歩いた。
もう、折り畳み傘のほつれた部分も気にならなくなった。
もっと、雨が強く降ればいいのにと思った。
しかし、家に着く頃には雨は止んでいた。
ということは、僕が目覚めたのは朝ではない。昼、目覚めたのだ。
つまり、僕は朝という時間を寝て過ごしたわけだ。
なんということだ。せっかくの休日なのに。
大した予定はないにしても、休日は有効に使いたいと思う。
寝て過ごしたことで、今日の半分を浪費してしまったわけだ。
カーテンを開けると、外は雨が降っていた。ますます気が沈んだ。
僕自身も、状況も、僕の休日を無駄にしようとしている。
しかし、本当のところはどうでも良かった。
いずれにしろ、僕の休日には予定と呼べるものは何もないのだ。
とりあえず、起きて顔を洗った。髭が少し伸びていたが剃らなかった。
腹が減っていたので、エスプレッソコーヒーを淹れて、食パンに
たっぷりとバターをのせてトーストし、ベーコンを炒めた上に
卵を2つ落として目玉焼きを作った。
飲むヨーグルトをコップに注いで、トーストの上に
蜂蜜をかけると、遅い朝食が出来あがった。
僕は、朝刊を読みながらがつがつと食べた。
400Mリレーの日本人選手達が、決勝に進出していた。
彼らは4人とも胸を張って写っていた。
エスプレッソコーヒーをすすりながら記事を読んでいる僕は、
背筋がものすごく曲がっていた。
なんだか急に自分が情けなくなってきたが、
どうしようも出来なかった。
彼らは走ったことで胸を張っていて、
僕は家で朝刊を読みながら背筋を曲げているのだ。
ただそれだけのことだ。僕は彼らに干渉しないし、
彼らも僕に干渉する権利はない。
そもそも、彼らは僕に干渉しないだろう。
彼らは走ることで頭がいっぱいなのだ。
とてもじゃないが、休日の昼過ぎに起きて、
エスプレッソコーヒーを飲みながら朝刊を読んでいる
他人のことを考えているはずがない。
僕だって、他人の遅い休日になんか思いを巡らせることはしない。
朝食をとり終わると、ボサ・ノヴァのレコードをかけた。
元気が出てきた。ボサ・ノヴァはいつだって僕を元気付けてくれる。
遅く起きたことや、雨が降っていることを
すべて忘れさせてくる音楽だ。
ましてや、背筋が曲がっていることなんてもう覚えてもいない。
外に目をやると、雨がやんでいた。
僕は、何か新しいレコードが欲しくなったので、
レコード屋に行くことにした。
雨は止んだものの、雲行きが怪しかったので、
念のために折り畳み傘をリュックに入れて家を出た。
歩き始めて5分も経たないうちに雨が降ってきた。
リュックから折り畳み傘を出して差した。一箇所、糸がほつれて
傘の骨から布が外れている部分があった。
そこが気になったので、目をやりながら僕は歩いた。
雨足はだんだん激しくなってきた。
僕の折り畳み傘は小さいので、だいぶ濡れてしまった。
僕はずっと、ほつれた部分を見ながら歩いていた。
その部分からも雨が吹きこんできた。周りを見回すと、
みんな大きな傘を差している。
特に、スーツを着た男性の傘はとりわけ大きい。
それ以外の人は、ビニール傘が多かった。
僕だってサラリーマンなのに、僕は大きい傘を持っていない。
そう考えると、寂しくなってきた。僕は、休日もまともに過ごせない。
その上、大きい傘すら持っていない。楽しそうに話しながら
歩いて行く人達を見ると、ますます寂しさはつのった。
僕には、休日に話しする人もいない。
そして、話し相手が入れるほどの大きい傘すら持っていない。
僕にできることはなんだろう。
この雨の中、ほつれている折り畳み傘を差す
僕にできることはなんだろう。
ふと、朝刊に載っていたリレーの選手達を思い浮かべた。
そうだ、僕は休日を有効に使うことも
出来ないし、大きな傘も持っていない。
ましてや、早く走ることなんてできる筈もない。
けれども、背筋をまっすぐに伸ばして歩くくらいのことはできる。
背筋を伸ばして歩こう。
それから僕は、背筋を伸ばして歩いた。
もう、折り畳み傘のほつれた部分も気にならなくなった。
もっと、雨が強く降ればいいのにと思った。
しかし、家に着く頃には雨は止んでいた。
GITANE、エアコン、罪と罰
2000年9月29日 朝目が覚めると、身体が震えていた。
原因は、オフにしたのについたままのエアコンと、
飲み過ぎたビール、そして、吸いすぎた煙草だろう。
ゴミ箱からはビールの空き缶が顔を出し、枕元に置いてある
缶からは、ドス黒い匂いが漂っていた。
灰皿には、GITANEの吸殻が山のようになっている。僕は、
タバコをフィルターぎりぎりまで吸うので、GITANEの文字は
どの吸殻にも見つからない。しかし、そのタバコはすべてGITANEだと
僕には分かる。だって、僕がすべて吸ったのだ。
1cm程に短くなった吸殻が山になっているのだから、昨日は相当
吸ったようだった。
記憶になかった。昨日の夜は、ドストエフスキーの『罪と罰』を
読みながら、ビールを飲み、煙草を吸った。
『罪と罰』は、まだ読み始めて間もない。昨日は、ラスコーリニコフ
が、アリョーナ・イワーノヴナと妹のリザヴェータ・イワノーヴナ
を斧で殺す場面を読んだ。
読み進めて行くと、だんだん寒気がしてきた。効きすぎたエアコンの
せいかもしれない。しかし、決して、2人が殺される場面の描写が
おごましかったのではない。2人を殺害したあとの、ラスコーリニコフは
あまりに怯えていた。震え方、恐れ方が尋常ではなく、脂汗が今にも
吹き出しそうだった。そんな彼の姿を、読みながら僕自身に投射して
しまったため、僕も震えてしまったのだ。
本を閉じて灯りを消しても、しばらくは寝つけなかった。貧と
それによってもたらされる殺人を考えると、とても眠れたものではなかった。
僕も、あまりに貧しくて、どうにもならなくなったら、殺人を
犯してしまうのだろうか。
スウィッチを切ったはずのエアコンからは、まだ冷気が出ていた。
僕は、布団に包まって、少し冷や汗をかきながらなんとか眠った。
こうして、朝目が覚めると震えていた。
一応シャワーを浴びてスーツに着替えたものの、吐き気をもよおして、
とても出かけられそうになかった。
仕方ないので、スーツのまま、しばらくベットにもぐりこんだ。
少し楽になったところで、出社時間になった。ふらふらしたが、
強引に会社に向かった。
会社に着くと、エレベーターでアルバイトの女性に出会った。
「顔が青いですよ」
と彼女は言った。
やはり寒気がする。僕は、軽く挨拶を返して、自分の持ち場に就いた。
仕事を始めると、幾分か楽になってきた。緊張するからなのだろう。
手があいた時に、熱いコーヒーとクリームパンを買ってきて、食べた。
僕はすっかり元気になった。
朝、エレベーターで会った女性が声をかけてきた。
「元気になりましたね」
と彼女は言った。僕は、
「おかげさまで」
と答えた。
原因は、オフにしたのについたままのエアコンと、
飲み過ぎたビール、そして、吸いすぎた煙草だろう。
ゴミ箱からはビールの空き缶が顔を出し、枕元に置いてある
缶からは、ドス黒い匂いが漂っていた。
灰皿には、GITANEの吸殻が山のようになっている。僕は、
タバコをフィルターぎりぎりまで吸うので、GITANEの文字は
どの吸殻にも見つからない。しかし、そのタバコはすべてGITANEだと
僕には分かる。だって、僕がすべて吸ったのだ。
1cm程に短くなった吸殻が山になっているのだから、昨日は相当
吸ったようだった。
記憶になかった。昨日の夜は、ドストエフスキーの『罪と罰』を
読みながら、ビールを飲み、煙草を吸った。
『罪と罰』は、まだ読み始めて間もない。昨日は、ラスコーリニコフ
が、アリョーナ・イワーノヴナと妹のリザヴェータ・イワノーヴナ
を斧で殺す場面を読んだ。
読み進めて行くと、だんだん寒気がしてきた。効きすぎたエアコンの
せいかもしれない。しかし、決して、2人が殺される場面の描写が
おごましかったのではない。2人を殺害したあとの、ラスコーリニコフは
あまりに怯えていた。震え方、恐れ方が尋常ではなく、脂汗が今にも
吹き出しそうだった。そんな彼の姿を、読みながら僕自身に投射して
しまったため、僕も震えてしまったのだ。
本を閉じて灯りを消しても、しばらくは寝つけなかった。貧と
それによってもたらされる殺人を考えると、とても眠れたものではなかった。
僕も、あまりに貧しくて、どうにもならなくなったら、殺人を
犯してしまうのだろうか。
スウィッチを切ったはずのエアコンからは、まだ冷気が出ていた。
僕は、布団に包まって、少し冷や汗をかきながらなんとか眠った。
こうして、朝目が覚めると震えていた。
一応シャワーを浴びてスーツに着替えたものの、吐き気をもよおして、
とても出かけられそうになかった。
仕方ないので、スーツのまま、しばらくベットにもぐりこんだ。
少し楽になったところで、出社時間になった。ふらふらしたが、
強引に会社に向かった。
会社に着くと、エレベーターでアルバイトの女性に出会った。
「顔が青いですよ」
と彼女は言った。
やはり寒気がする。僕は、軽く挨拶を返して、自分の持ち場に就いた。
仕事を始めると、幾分か楽になってきた。緊張するからなのだろう。
手があいた時に、熱いコーヒーとクリームパンを買ってきて、食べた。
僕はすっかり元気になった。
朝、エレベーターで会った女性が声をかけてきた。
「元気になりましたね」
と彼女は言った。僕は、
「おかげさまで」
と答えた。