GITANE、エアコン、罪と罰
2000年9月29日 朝目が覚めると、身体が震えていた。
原因は、オフにしたのについたままのエアコンと、
飲み過ぎたビール、そして、吸いすぎた煙草だろう。
ゴミ箱からはビールの空き缶が顔を出し、枕元に置いてある
缶からは、ドス黒い匂いが漂っていた。
灰皿には、GITANEの吸殻が山のようになっている。僕は、
タバコをフィルターぎりぎりまで吸うので、GITANEの文字は
どの吸殻にも見つからない。しかし、そのタバコはすべてGITANEだと
僕には分かる。だって、僕がすべて吸ったのだ。
1cm程に短くなった吸殻が山になっているのだから、昨日は相当
吸ったようだった。
記憶になかった。昨日の夜は、ドストエフスキーの『罪と罰』を
読みながら、ビールを飲み、煙草を吸った。
『罪と罰』は、まだ読み始めて間もない。昨日は、ラスコーリニコフ
が、アリョーナ・イワーノヴナと妹のリザヴェータ・イワノーヴナ
を斧で殺す場面を読んだ。
読み進めて行くと、だんだん寒気がしてきた。効きすぎたエアコンの
せいかもしれない。しかし、決して、2人が殺される場面の描写が
おごましかったのではない。2人を殺害したあとの、ラスコーリニコフは
あまりに怯えていた。震え方、恐れ方が尋常ではなく、脂汗が今にも
吹き出しそうだった。そんな彼の姿を、読みながら僕自身に投射して
しまったため、僕も震えてしまったのだ。
本を閉じて灯りを消しても、しばらくは寝つけなかった。貧と
それによってもたらされる殺人を考えると、とても眠れたものではなかった。
僕も、あまりに貧しくて、どうにもならなくなったら、殺人を
犯してしまうのだろうか。
スウィッチを切ったはずのエアコンからは、まだ冷気が出ていた。
僕は、布団に包まって、少し冷や汗をかきながらなんとか眠った。
こうして、朝目が覚めると震えていた。
一応シャワーを浴びてスーツに着替えたものの、吐き気をもよおして、
とても出かけられそうになかった。
仕方ないので、スーツのまま、しばらくベットにもぐりこんだ。
少し楽になったところで、出社時間になった。ふらふらしたが、
強引に会社に向かった。
会社に着くと、エレベーターでアルバイトの女性に出会った。
「顔が青いですよ」
と彼女は言った。
やはり寒気がする。僕は、軽く挨拶を返して、自分の持ち場に就いた。
仕事を始めると、幾分か楽になってきた。緊張するからなのだろう。
手があいた時に、熱いコーヒーとクリームパンを買ってきて、食べた。
僕はすっかり元気になった。
朝、エレベーターで会った女性が声をかけてきた。
「元気になりましたね」
と彼女は言った。僕は、
「おかげさまで」
と答えた。
原因は、オフにしたのについたままのエアコンと、
飲み過ぎたビール、そして、吸いすぎた煙草だろう。
ゴミ箱からはビールの空き缶が顔を出し、枕元に置いてある
缶からは、ドス黒い匂いが漂っていた。
灰皿には、GITANEの吸殻が山のようになっている。僕は、
タバコをフィルターぎりぎりまで吸うので、GITANEの文字は
どの吸殻にも見つからない。しかし、そのタバコはすべてGITANEだと
僕には分かる。だって、僕がすべて吸ったのだ。
1cm程に短くなった吸殻が山になっているのだから、昨日は相当
吸ったようだった。
記憶になかった。昨日の夜は、ドストエフスキーの『罪と罰』を
読みながら、ビールを飲み、煙草を吸った。
『罪と罰』は、まだ読み始めて間もない。昨日は、ラスコーリニコフ
が、アリョーナ・イワーノヴナと妹のリザヴェータ・イワノーヴナ
を斧で殺す場面を読んだ。
読み進めて行くと、だんだん寒気がしてきた。効きすぎたエアコンの
せいかもしれない。しかし、決して、2人が殺される場面の描写が
おごましかったのではない。2人を殺害したあとの、ラスコーリニコフは
あまりに怯えていた。震え方、恐れ方が尋常ではなく、脂汗が今にも
吹き出しそうだった。そんな彼の姿を、読みながら僕自身に投射して
しまったため、僕も震えてしまったのだ。
本を閉じて灯りを消しても、しばらくは寝つけなかった。貧と
それによってもたらされる殺人を考えると、とても眠れたものではなかった。
僕も、あまりに貧しくて、どうにもならなくなったら、殺人を
犯してしまうのだろうか。
スウィッチを切ったはずのエアコンからは、まだ冷気が出ていた。
僕は、布団に包まって、少し冷や汗をかきながらなんとか眠った。
こうして、朝目が覚めると震えていた。
一応シャワーを浴びてスーツに着替えたものの、吐き気をもよおして、
とても出かけられそうになかった。
仕方ないので、スーツのまま、しばらくベットにもぐりこんだ。
少し楽になったところで、出社時間になった。ふらふらしたが、
強引に会社に向かった。
会社に着くと、エレベーターでアルバイトの女性に出会った。
「顔が青いですよ」
と彼女は言った。
やはり寒気がする。僕は、軽く挨拶を返して、自分の持ち場に就いた。
仕事を始めると、幾分か楽になってきた。緊張するからなのだろう。
手があいた時に、熱いコーヒーとクリームパンを買ってきて、食べた。
僕はすっかり元気になった。
朝、エレベーターで会った女性が声をかけてきた。
「元気になりましたね」
と彼女は言った。僕は、
「おかげさまで」
と答えた。
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